連載3回目、はたらく人の健康を現場でみまもり続ける産業医であり、合同会社ひとしずくメディカルスーパーバイザーの丸山崇先生によるウェルビーイングのためのコラムです。
生体リズムという言葉を聞いたことがありますか?
朝起きて、活動して、食事して、寝る、毎日の生活の中で感じる不調も、ちょっとしたご自身の行動の変化、気配りにより”生体リズム”を整え、大きな不調を防止できるとのこと。
今日はマインドセットからの養生のための知識を!ぜひご一読ください。
皆様の明日に役立つ情報になりますように。
願いを込めてお届けします。
コラム著者:丸山 崇 氏
産業医科大学准教授 専門:睡眠生体リズム、産業医学
2001年産業医科大学医学部卒業。脳神経外科レジデントとして臨床研修をおこなった後、産業医として、旭化成(株)、新日鐵住金(株)等で企業従業員の健康管理業務を行う。2014年よりスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所客員研究員として睡眠とスポーツパフォーマンスの研究などに従事。2018年より産業医科大学医学部准教授。脳内ホルモン(バゾプレッシン、オキシトシン)やストレス反応、睡眠生体リズムの生理機構に関する研究に従事している。
スタンフォード留学中にSearch Inside Yourself(Googleが採用しているマインドフルネスプログラム)やスタンフォード大学CCAREのCompassion Cultivation Trainingなどのコースを修了。また、スタンフォード大学マインドフルネス教室で知られるスティーヴンマーフィー重松先生のワークにも参加。現在は、医療従事者向けのマインドフルネスワークショップなども行っている。
生体リズムをととのえて生産性を上げる
コロナ禍で、テレワークの普及が進み、
ご自宅でデスクワークを行っている方も多いと思います。
テレワーク中の労働者のストレスについて多くの調査が行われ、興味深い結果が出ています。
コロナ禍ではたらくひとのストレスは低下、生産性は?
生活状況を調査した結果を見ると、
通勤の負担軽減や上司と対面する時間が減ったことなどで、
多くの労働者の「ストレスは低下」しているようです。
一方で、「生産性も低下」したと答えた方が多いことがわかっています。
ストレスが減ったのに、なぜ、生産性が低下するのか?
一つは、時間制限がなく、ずっと家で仕事をすることによって、
夜型の生活になり、規則正しい生活リズムが維持できなくなっている可能性があります。
通勤する必要がないため、朝遅くまで寝ていて(場合によっては、昼ぐらいまで寝ていて)、それから仕事を始め、夜はネットなどを見て、遅くまで起きているという人の話を聞いたこともあります。
テレワークでも、生産性を上げて仕事をするためのポイントは、
1日のリズムをととのえ、昼と夜のメリハリをつける
ことだと言えます。
昼はしっかり頭と身体を働かせて活動し、夜は良質の睡眠をとってしっかり休息する。
このリズムを作ることを意識しましょう。
リズムコンディショニングで生産性を上げる
1日の生活リズムをととのえることを「リズムコンディショニング」と言います。
昼間はしっかり脳を活動させ、
生産性を上げて仕事をし(覚醒させ)、
夜は深い睡眠で脳と体を休息させる(回復する)。
では、このリズムを作るには、どうすれば良いのでしょうか?
このリズムを作っているのは、人間の細胞の中にある、「時計遺伝子」です。
時計遺伝子が作るリズムは「体内時計」とも呼ばれて、体温やホルモン分泌にも影響を与えます。
リズムコンディショニングをするには、
この「体内時計のスイッチ」を知ることが必要です。
朝日を浴びて、朝食をとる
ポイント1 光
まず、大事な体内時計のスイッチは「光」です。
時計遺伝子の1日のリズムは、光でリセットされることが分かっています。
朝、しっかり光を浴びることで、セロトニンという神経伝達物質が分泌され、脳の活動がスムーズになり、精神的にも安定します。
また、夜には(光を浴びた13〜15時間後から)、メラトニンというホルモンが出て、睡眠を促して、脳と体をゆっくり休息させてくれます。
「朝日を浴びる」ことで、生体リズムが整うのです。
ポイント2 食事
次に、「食事」です。
食事も、時計遺伝子のリズムに関わっていて、全身の時計遺伝子をリセットしてくれます。
「朝食をしっかり食べる」ことで、時計遺伝子がリセットされ、ホルモン分泌や体温のリズムが整います。
逆に、夜間に光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制されます。
また、夜間に食事をとると、消化するために内臓の動きが活発になり、夜間の休息が妨げられます。
寝る前は、
強い光に当たらず、あまり多くの物を食べない
ようにしてください。
意識的に、
朝日を浴びて、朝食をとる
ことで、生体リズムも整ってくるのです。
深部体温を意識する
リズムコンディショニングのもう一つのポイントは、「深部体温」です。
深部体温とは、体の中心部や脳の温度のことです。
皮膚の表面の温度ではありません。
深部体温は、人の活動性と関連していて、昼間に高くなり、夜に低くなります。
この、深部体温のリズムがしっかりついていないと、昼間に体温が下がり、身体や脳の動きが悪くなり、夜は、体温がしっかり下がらないことで、深い睡眠が取れなくなります。
深部体温に注目して、リズムコンディショニングするポイントを示します。
・昼間に軽い運動をする
運動することで、体の深部体温が上がります。昼間に意識的に運動をして、一度体温を上げることが大切です。昼ヨガをして、しっかり体を動かすことも一つの方法です。
・夜はしっかり風呂で体を温める
風呂に浸かって全身を温めることによって、その後、手足からの熱放散が促進され、体の深部体温がスムーズに低下することが知られています。
・コーヒー飲むなら午前中。
カフェインは活動性を亢進させます。カフェインの効果は4時間以上続くと言われているので、夕方以降はカフェインを摂らないようにしてください。カフェインの入ったコーヒーや緑茶を飲むなら午前中です。
どれも、今日からでも出来る生活習慣です。
これを意識するだけで、
夜の睡眠も深くなり、昼間の生産性も上がる
ことは間違いありません。
このリズムコンディショニングの、一つのアクションとして、昼ヨガを生活習慣に取り入れることもお勧めします。
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